●三匹の獣の話


 今日話すのはホウオウの力で甦った三匹のポケモンの話だ。

 エンジュには二つの塔があった。あるとき人間たちの争いがもとでそのうちのひとつが燃えてしまった。三匹のポケモンが巻き込まれて焼け死んだ。それを哀れに思ったホウオウが新しい姿で蘇らせたのはご存じの通りだ。
 そこで甦った三匹はひとまず故郷へと返り、その事を報告することにした。彼らは報告を終えたらまた落ち合う約束をして三方に走っていった。

 三匹のうち一番早くたどり着いたのは青い身体の獣だった。ところが親兄弟のところにたどり着いたものの、あまりに姿が変わっていて自分だとわかって貰えない。話をしようとするものの声もまったく違って恐れられ逃げられるばかりだった。
 青い獣は悲しみに涙を流した。けれど再び落ち合う二匹に涙は見せられないからと、近くの湖で涙を洗った。その時、湖が涙で澄みわった。スイクンが水を浄化する力を得たのはこの時からである。

 二番目に故郷についたのは黄色の毛皮の獣だった。だがやはり同じ理由から自分だとわかって貰えなかった。
 黄色の毛皮の獣は悲しみに涙を流した。けれど再び落ち合う二匹に涙は見せられないからと、雲を呼んだ。雷が轟いて激しい雨が降り、彼はその雨で涙を洗った。ライコウが背中に雷雲を背負うようになったのはこの時からである。

 最後に故郷にたどり着いたのは褐色の長い毛の獣だった。だが彼もまた同じ理由から拒絶されてしまったのだった。
 褐色の長い毛の獣は悲しみに涙を流した。けれど再び落ち合う二匹に泣き腫らした顔は見せられないからと、一計を案じた。彼は人間の鍛冶屋のところに行くとこう言った。
「お前が一年間に鉄をつくるのに必要な量の炎、それを今与えてやろうから、私の望むものを作って欲しい」
 鍛冶屋は作った鉄で獣の顔に合う仮面を作った。獣はそれを被ると二匹のところに戻っていった。エンテイが炎を操り、今のような姿となったのはこの時からである。

 三匹が今のような有り様となったのはこの時からなのである。