昔むかし、秋津国の南、豊縁と呼ばれる土地には異なる色の大きな都が二つございました。
 二つの都に住む人々はお互いに大変仲が悪うございました。
 彼らはそれぞれ自分達の色、信仰こそが正統だと考えておりました。
 今回はその二つの都のうちの一つ、青の都に住む一人の女の話をすることに致しましょう。

 その女は今の時代では貴族などと呼ばれる身分でありました。
 齢は四十と五十の間くらいでありましょうか。
 蓮見小町などと呼ばれた昔の彼女は美人だと有名でした。
 若い頃などは都の様々なものが、彼女を一目見ようと足繁く通ったものです。
 しかしやはり歳や老いに勝つことは出来ませんでした。
 今や長い髪には多くの白が混じり、肌の張りはなくなり、顔にはすっかりしわが増えてきたその女にはもはや言い寄るものは誰もおりませんでした。
 夫はおりますけれど、若い娘の宮に通うのに夢中です。
 彼女には見向きもしませんでした。

 そんな彼女の唯一の楽しみは時折開かれる歌会でございました。
 夜に集まった高貴な身分の人々は西と東にわかれ、東西一人ずつがそれぞれの五七五七七の歌を詠んでその出来栄えを競い合うのです。
 見目の美しさは歳を追うごとに色あせます。
 けれど和歌ならばどんなに歳をとっても、美しさで負けることはありません。
 歌ならば彼女はほとんど負けたことがありませんでした。
 季節の歌、恋の歌……歌会に出されるあらゆる題を彼女は詠ってまいりました。

「ふうむ、ハスミどのの勝ちじゃ」

 このように審判が言うと彼女の胸はすっといたします。
 自分に見向きもしない男達、若くて美しい女達もこの時ばかりは悔しそうな顔をします。
 そんな者達を和歌で負かして彼女は気晴らしをしていたのでした。
 全員が歌を詠み、甲乙がつきますと、歌会の主催である位の高い男が今日出た歌の総評を述べました。
 そうして、次に催される歌の題お発表いたしました。

「次は水面(みなも)という題でやろうと思う。十日後の今日と同じ時間に屋敷に集まるよう」

 こうして貴族達は次の題目のことを頭に浮かべながら帰路についたのでございます。

 ハスミはさっそく次の題で和歌を考え始めました。
 和歌の得意な彼女は一日、二日で題の歌を作ってしまいます。
 書き物をしながら、散策をしながら、題目のことに思いを馳せます。
 すると少しずつ何かが溜まりはじめるのです。
 彼女はその何かを水と呼んでおりました。それが溜まると和歌ができるのだといいます。
 よい和歌と云うのは、まるで庭にある添水(そうず)の竹の筒が流れ落ちる水を蓄え、ある重さに達したときのようにカラーンと澄んだ音と共に水を落とすように、彼女の中に落ちてくるのであります。
 彼女はいつものように水が溜まるのを待っておりました。
 ですが今回は何かが変でした。
 まるで何日も雨の降らない日照りの日でも続いたかのように彼女の中に水が溜まらないのです。
 どこかに穴があいているのか、それとも渇いてしまうのか、理由はよくわからないのですが、一向に和歌が降ってくる気配がございません。
 いつもなら一日二日で出来てしまうものが三日、四日経っても出来てこないのです。
 彼女は心配になって参りました。

「ハスミどの、歌会に出す歌は出来ましたかな」

 近所に住む貴族が尋ねます。

「ええ、もちろんですわ」

 つい強がってそのように答えましたが、彼女の中で焦燥は募るばかりです。
 困ったことに五日経っても、六日経っても歌が出来ないままでありました。

「ああ困ったわ。歌が出来ない」

 と、彼女は嘆きました。
 貴族の中にはあまり歌が得意でない者もおりまして、秀でたものに依頼などしているものもおりましたが、ずっと自作を通してきてそのようなものを必要としなかった彼女にはそんなあてもございません。
 しかしそうこうしているうちにも日は過ぎて参ります。
 そうして、八日が過ぎようとしたころです。

「ハスミどの、あなた様の相手が決まりましてございます」

 と、使いのものが来て言いました。
「誰ですの」と、ハスミが尋ねますと、「レンゲどのです」と、使いのものが答えました。
 彼女は絶句いたしました。
 その名前は夫が足繁く通っている宮に住む若い女の名前だったからです。
 負けたくない!
 絶対に負けたくない!
 と、彼女は強く念じました。
 けれどまだ歌ができません。

「わかっているわ。もう昔のように若さでも、美しさでも勝てやしない。歌を作るのよ、私にはもう歌しかないのだから……」

 と彼女は自分に言い聞かせました。
 けれどそうこうしている間に九日目になりました。
 ハスミはぶつぶつと呟きながら、お付のもの一人つけずに屋敷を出てゆきました。

「お願いします。どうか私に歌を授けてください。あの女に負けない歌を」

 困った時の神頼みと申します。
 彼女は都外れに静かに佇む、古ぼけた小さな社に供物を捧げると願をかけました。
 都の中央には海王神宮と呼ばれる都人達が多く参拝する立派な神社がありまして、神様の力で言うなら、そちらがよかったのかもしれません。
 けれどこんな願いをかけるところを人に見られたくありませんでした。
 ですからハスミは人知れずひっそりと佇むその社に赴き、願をかけたのでした。
 石碑に刻まれた名は擦れて読むことができません。
 それでも、人も来ず寂れていようとも、社そのものが壊されていないところを見るとおそらくは中央の神宮に祀られた海王様の眷属なのでしょう。
 気がつけば空は大分暗くなっておりました。
 道を見失う前に帰らなければ、と彼女は思いました。
 しかし、日が沈むより早く暗い雨雲が空を覆い、ぽつぽつと雨が降り出します。
 あたりはすっかりと暗くなってしまいました。
 それでもなんとか道を確認しながら彼女は都への帰路を急ぎました。

「水面、水面……水面の歌……」

 その間にも彼女はずっと歌の題を唱えておりました。
 そうして、都の門近くにある蓮の花の咲く大きな池の橋を彼女が渡っている時のことでした。
 どこからか低い声が聞こえたのでございます。

『ハスミどの、ハスミどの』

 ハスミは驚いて振り返ります。けれど彼女の後ろには誰も見えません。
 橋の向こうは暗く、ただ橋の上に雨の落ちる音が聞こえるだけです。
 するとふたたびどこからか低い声が聞こえてまいりました。

『水芙蓉 咲き乱れるは さうざうし うるはし君を 隠す蚊帳なり』

 ぽつぽつと雨音が響く中、低い声が呟いたのは歌でした。
 五と七と五七七の歌でありました。



 そうして十日目の夜に彼女は詠みました。
 結局それ以上の歌を作ることができなかった彼女は、あの雨の夜に聴こえた五七五七七の歌を詠んだのでございます。
 審判は即座にハスミに勝ちを言い渡しました。
 正面に見えるのは若い女の悔しそうな顔。
 ハスミはほっと胸を撫で下ろしました。

 前々から歌がうまいと言われていたハスミでしたが、これを機とし、彼女はますます歌人としての評判を高めたと伝えられています。
 水芙蓉の歌に端を発し、彼女は歌の世界は大きく広がった。
 瑞々しい女性の感性に、季節の彩(いろどり)と、あらゆる場所からの視点、懐かしさが合わさってより豊かなものになった、と。
 後の世で札遊びの歌を選んだとある歌人はそのように論じています。
 
 ハスミはより多くの歌会へ招かれて、より多くの歌を詠みました。
 幾度と無く彼女の勝ちが告げられました。
 歌会で彼女と当たったらどんな歌人も絶対に勝てない。
 都の貴族はそのように噂し、歌会で彼女と当たることを恐れたといいます。
 彼女は十年、二十年と歌を詠み続けました。




 さて、このようにして歌人としての地位を欲しいままにしてきたハスミでありましたが、やはり老いには勝てませんでした。
 ますます寄る年波はや彼女の身体を衰えさせていきました。
 すべての髪の毛がすっかり白くなってしまい、腰を悪くしたハスミは、やがて歌会にも顔を出さなくなりました。
 そのうちに彼女の夫が亡くなりました。
 彼女は都外れの粗末な庵に隠居いたしまして、時に和歌を作って欲しいという依頼を受けながら、ひっそりと余生を過ごしたのであります。
 そんなハスミのもとに時折尋ねてくる男がありました。

「サダイエ様がお見えになりました」

 と、下女が言いますと「お通しして」とハスミが答えます。
 すると襖が開けられて、烏帽子姿の男が入ってまいりました。

「これはサダイエどの、またいらしてくれたのですね。いつもこのような出迎えでごめんなさいね」

 下半身を布団に埋めて、半身だけ起き上がったハスミが申し訳なさそうに言います。

「いいえ」

 と、男は答えました。
 齢はハスミの二、三十ほど下でありましょうか。
 王宮仕えの歌人として、また歌の選者としても名を知られる男でした。
 最近は御所に住む大王(おおきみ)の命で、古今の歌をまとめたばかりなのです。

「噂はお聞きしましたわ。なんでも私の歌をまとめてくださるとか」
「おやおや、お耳が早いですなぁ」

 新進気鋭の歌人は笑います。
 
「ハスミどのは私の憧れです。どんな題を与えられても一級品、歌会では負けなし、もしすべての勝負事が歌で片付くのならば、今頃はあなた様が豊縁を一つにしておりましょう。私はハスミどのような歌人になりたくて研鑽を重ねて参りました」
「まあ、お上手ですこと」

 と、ハスミも微笑み返します。

「ご謙遜を。それに私は嬉しいのです。あなたの歌をまとめられることが」

 若き歌人は本当に嬉しそうに語りました。

「ご存知なら話が早い。今日はそのことで相談に参りました。和歌集にはそれに相応しい表題がなければなりませんからね。どのようなものがいいかと思いまして」
「そうねぇ……」

 ハスミは庵の外を眺めてしばし思案を致しました。
 彼女の部屋からは大きな池が見えます。
 蓮の花が点々と浮かんでおりました。
 この庵自体が池に片足を突っ込むような形で立っておりまして、彼女の部屋は池の上にあったのです。

「こんなのはどうかしら。……"詠み人知らず"というのは」

 しばらくの思案の後に彼女はそう答えました。

「よ、詠み人知らずでございますか?」

 若き歌人は目を丸くして聞き返しました。
 詠み人知らずというのは、作者不詳という意味です。
 記録が残っておらず、和歌の作者がわからない歌には、詠み人知らずと記されるのです。
 ですから自分の和歌集に詠み人知らずという表題をつけたいというのでは、男が不思議がるのも無理はありません。

「サダイエどの、あなたは以前に私の歌を評してこう言ったことがありましたね。私の歌には瑞々しさがあった。その後に季節の彩、あらゆる場所からの視点、懐かしさが合わさって、より豊かなものになった、と」
「ええ」
「そうして、こうもおっしゃいました。私の歌の世界が広がったのは、水芙蓉の歌以降である、と。さすがはサダイエどのです。大王もが認める歌人だけのことはございます」

 仕方が無いわねぇとでも言うように彼女は微笑みました。
 そしてこのように続けました。

「その通りですわ。だって水芙蓉の歌以降、私の名で詠われた歌の半分は別の方が作ったのですもの」
「……なんですって」
「別に驚くようなことではございませんでしょう。作者が別にいたなんていうことはこの世界にはよくあることです。あなたも薄々感づいていたのではなくて?」

 ぐっと男は唸りました。
 この年老いた女歌人にもう何もかも見透かされたような気がいたしました。
 彼も本当は知りたかったのかもしれません。

「……たしかに、考えなかったことがなかったわけではありません。……しかし、それなら誰だと言うのです。私は知りません。あなた様の代わりに歌を作れるような歌人にとんと心当たりがございません」
「ご存知ないのは無理もございません。その歌人は人ではありませんもの」

 ハスミは隠すでもなくさらりと言いました。
 彼女もうこの世に留まっていられる時間がそう長くないと知っていました。
 ですから遺言の代わりになどと考えたのかもしれません。

「私も姿を見たことはありませんの」

 と、彼女は言いました。
 そうして打ち明け話がはじまったのでございます。


 二十年程前、あなた様もご存知の通り、歌会で水面という歌の題が出されました。
 そのときに私、歌を作ることができませんでしたの。
 はじめてでしたわ。まるで枯れてしまった泉のように、まったく水が溜まらないのです。
 けれど、相手は夫が通う宮の憎い女。
 私は絶対に負けたくなくて、都の外れにある小さな社の神様に願をかけました。
 歌が欲しい、あの女に負けない歌を授けてほしい、と。
 その帰り道のことです。北門の池をまたぐ橋にさしかかった時に誰かが歌を詠んだのです。
 それが水芙蓉の歌でした。
 その歌で私は勝つことができたのです。

 けれども私にも歌人としての誇りがございます。
 自分以外の作った歌を使うのはこれきりにしようと思って、社へは近づかないようにしておりました。
 その後の何回かは自分で歌を作りましたわ。
 もう水が溜まらないなんていうこともありませんでした。私は自力で作り続けることが出来たのです。

 でも、十の歌会を経て、十の題をこなしたときに、私はふと思ったのです。
 あのすばらしい歌を詠んだ歌人ならこの題をどう表すのだろうかと。
 私は声の聞こえた橋に行きました。
 そうして、さきほど歌会で披露したばかりの五七五七七の歌をもって姿見えぬ歌人に呼びかけたのです。
 返歌はすぐに返って参りました。
 すばらしい出来栄えでした。

「近くにいらっしゃるのでしょう。どうか姿を見せてください」

 私はそのように呼びかけましたが、姿は見えません。
 かわりにまた声が聞こえて参りました。

『貴女にお見せできるような容姿ではないのです』

 よくよく聞けばそれは私の足元から聞こえてくるようでした。
 私ははっとして橋の下を見ましたわ。
 けれど気がつきました。橋の下にあるのは池の濁った水ばかりだということに。
 するとまた声が聞こえました。

『私は人にあらず。水底に棲まう者なのです』

 驚きました。
 歌人は水に棲む者だったのです。

『ハスミどの。貴女が小さかった頃から私は貴女を知っています。二十を数えた頃の貴女はそれは美しかった』

 そう水に棲む歌人は言いました。そして語り出しました。
 私はこの土地が草原と湿地ばかりだった頃からここに住んでいる、と。

 あの頃の虫や魚や鳥、獣たちはは皆、人の言葉を操ることが出来た。
 私達は十日に一度は歌会を開き、その出来栄えを競いあった。
 だがこの地に都が建造されはじめた頃からか、だんだん何かがおかしくなっていった。
 次第に獣達は言葉を失っていった。
 はじめに話さなくなったのは虫達だった。
 それは鳥、魚へと広がっていった。
 親の世代で言の葉を操れた者達も、子は話すことが出来なかった。
 私達の子ども達も同じだった。彼らが言葉を発すことはついぞなかった。
 かろうじて言葉を繋いだ獣達も都が出来る頃にはどこか別の場所へ去っていった……。
 それはちょうど二の国が争って、各地で人による神狩りがはじまった時期と一致していた。知ったのはずいぶんと後になってからだったが。
 それでもその頃はまだよかった。
 私の社は青の下、同属のよしみで破壊を免れたし、水の中の友人達も健在だったからだ。
 私達は言葉を発し、歌を作ることが出来た。
 だが時は少しずつ奪っていった。
 言葉交わせる友人達も一人、また一人と声届かぬ場所へ旅立っていった。
 私は最後の一人。
 この土地の水に棲む者の中で人と同じ言葉を発し、歌を詠める最後の一人なのだ。

「けれど水の歌人は人を恨んではおりませんでしたわ。これはこの世の大きな流れなのだと、彼は云ったのです。多くの神々君臨する旧い時代が終わって、新しい時代がくるだけのことなのだと。自分はその変化の時に居合わせた。ただあるがままを受け入れよう、と」

 けれど私にはわかりましたわ。
 水に棲む歌人の哀しみが。
 まだ若くて美しかった頃、多くの男たちが私のところにやってきました。
 けれど年月はすべてを奪ってゆきました。
 私は次第に省みられることがなくなって、夫にも見捨てられ一人になっていった。
 私は見たのです。
 水の歌人の境遇の中に自分の姿を見たのです。
 私達は共に去りゆく者、忘れられてゆく者なのです。

「それからというもの、私は会の前の晩になると水の歌人と言葉を交わすようになりました。歌会の題でお互いに歌を詠い、よりよいと決めたほうを次の晩の歌会に出したのです」

 水の歌人はたくさんの歌を知っていました。
 自分が若い頃に作った歌、水に棲んでいた友人達の歌、空や野の向こうに去っていった鳥や獣がかつて詠んだという季節とりどりの歌を教えてくれたこともありました。

「だから私の詠んだ歌は誰にも負けませんでした。私の立つ橋の下には水の歌人を含めた何人もの詠み手がいたのですもの。たかだか三十や四十を生きた人間一人には負ける道理がないのです」

 そこまで云うとハスミは身体を横たえました。
 上を見上げると若き歌人が沸いてくる言葉を整理しかねています。

「ふふふ、ついしゃべりすぎてしまいましたね。今の話を信じるも信じないのもあなたの自由です。和歌集の表題のこと、無理に頭に入れろとは申しませんわ。けれど差支えが無いのなら、その烏帽子の中にでも入れて置いてくださいませ」

 そうして、彼女は布団をかぶり目を閉じたのでありました。



 サダイエのもとに訃報が届いたのはその数日後でした。
 世話をしていたものによれば、ハスミの死に顔はもう言い残すことがないというように穏やかなものだったといいます。

 しかし、奇怪なのはその後でした。
 ハスミの亡骸は人の墓に入ることはありませんでした。
 葬列に加わるはずだったその亡骸は、都を少しばかり揺らした小さな地震によって、庵と部屋ごと崩れて池の中へと投げ出されたのだというのです。
 やがて庵の廃材は浮かんできましたが、ハスミの亡骸が浮かんでくることはありませんでした。



「ハスミどの、あなたは水の歌人のもとへ行かれたのだろうか……?」

 サダイエは出来上がった和歌集のうちの一冊に石をくくりつけ、かつて庵のあった池の底へと沈めました。
 歌集はほの暗い水の底へ沈んで、すぐに見えなくなりました。
 そのとき、

「おや?」

 と、サダイエは呟きました。
 すうっと、何か大きな影が水の中を横切ったのが見えたのです。
 影には長い長い二本の髭が生えているように見えました。団扇のような形をした尾びれが揺れ、そして水底に消えました。

 ……今のは、今横切った魚は大鯰(おおなまず)であろうか。

 そのように彼の目には映りましたが、はっきりとはしませんでした。
 歌集を沈めた時の波紋が、まだわずかに揺らめいておりました。



 それは昔むかしのことです。
 まだ獣達が人と言葉交わすことが出来た頃のお話でございます。










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 水芙蓉 咲き乱れるは さうざうし うるはし君を 隠す蚊帳なり


意味:水芙蓉、すなわち蓮の花がたくさん咲くというのは寂しいものだ。咲きすぎた蓮の花は、水面に映る美しい貴女の顔を覆い隠す蚊帳となってしまうのだから。