■黄昏テレフォン

 今日も一日が終わろうとしている。
 日光をたっぷり吸い込んだ洗濯物を取り込んで、夕食の準備をしていると「ジリリリ」と電話が鳴った。
「もしもし、佐々木ですが」
 私はいつものように受話器を取る。
「もしもし」
 だが返事が無い。
 受話器のむこうにいるであろう相手はなぜか無言だった。
「もしもし? もしもし」
「…………」
「もしもし、聞こえてます?」
「…………………………………………」
 ああ、電波が悪いのか、それともいたずらか。まぁ、いたずらのセンが強そうだが。
「……切りますよ?」
「…………、…………コンバンワ、勉クンノオ母サンデスカ? ボクハ、スリーパー……」
「は?」
「…………オ前ノ息子ハ預カッタ。無事ニ帰シテ欲シケレバ……」
「はいはい、寄り道しないで早く帰ってきなさいね」
 ガチャリ、と電話が切れた。
 受話器ごしに聞こえてきたのは間違いなくバカ息子の声だった。
 鼻をつまんで声を誤魔化していたがバレバレである。
 スリーパーが電話をかけてきて身代金やら木の実やらを要求する。
 最近こういうのが子ども達の間で流行っているらしい。