●友人と会った話



 バトルサブェイでバトルをしていたところ、十戦目くらいで懐かしい顔に当たった。
 ジャック。同じ町から旅立った同期だった。
 もう何年も会っていなかったが、当時の面影が残っている。
 最初にあいつが貰ったポカブはすっかり立派なエンブオーになっていた。
 連続で繰り出されるつっぱり。車両を揺るがすヒートスタンプ。
 正直かなり手ごわかったがなんとか勝つ事が出来た。

「あー、やっぱ強いな。お前」

 ジャックは言った。
 相性ではこっちが有利なのに、と。

「覚えてるか? 最初にポケモン貰った時、俺達バトルしただろ。

 あの時も勝てなくてさ。俺、すごい悔しかったんだ」
 だから一生懸命育てたんだぜ、ジャックは続ける。
 それから二言三言言葉を交わしたけれど、敗者は車両から出なくちゃいけなかった。
 去り際にジャックは言った。

「あー、とうとう勝てなかったな」

 そう言って同郷の友は出ていった。

 ジャックには辛勝した俺だったが、次の相手にはあっさり負けてしまった。
 あっけないほどの三タテだった。
 俺は車両を降りた。
 おふくろからのライブキャスターが入ったのはホームに降りたすぐ後だったと記憶している。

「ひさしぶりやねー。今何しとっと?」

 画面の向こうで母が言う。

「バトル」

 何だよ。こんな時間に。
 内心ウザイと思いながら俺は答える。

「で、なんか用?」
「ああ、それがなー……」

 次に母はおかしなことを口にした。

「お前と同じ時期に旅に出たジャックを覚えとる? あの子、亡くなっとーと」
「…………」

 何を言っているのかわからなかった。
 だって、ジャックなら。さっき。

「一年前くらいからな、悪かったらしいわ。ずっとヒウンの病院に入院してて」

 今朝、息を引き取ったらしい。
 そう母は告げた。

「葬式はこっちでやるらしいから、お前も一度顔見せとけ」

 そう母が言って、以後はよく覚えていない。
 その後、葬式があって、そこで俺は物言わぬジャックと再会を果たすがそこにいたのは抜け殻だった。
 本人はもうここにはいないのだと、そんな空虚さが俺の感覚を占めていた。

 あれからもう何年も経って、あの時何を話したかも忘れてしまったけれど、
 とうとう勝てなかった、というその台詞だけが忘れられない。





/ 車窓から(ポケモン編)